この世のすべてはまやかし コーエン兄弟の処女作(1984年)にデジタル処理をほどこし保存状態をよくし、多少の編集を行って見やすくした作品だそうだ。映画に登場する私立探偵(M・エメット・ウォルシュ)が、冒頭紹介している。それほどこの『ブラッド・シンプル』はコーエン兄弟にとって重要な作品であり、このまま放置しておくことができなかったのだろう。
彼らの作品のストーリーを追ってもあまり意味がないのはいつもの通りで、その奥に広がっている深遠なテーマを探るためには頭を使って見なければならない1本だ。車のシートに浮かび上がってくる血痕、いつまでも机に放置された4匹の魚の死骸、配管から落ちそうで落ちない水滴。なにげないストーリーの中にこれらのメタファーをしのびこませることによって、この映画が単なる<スリラー>ではないことが観客に知らされる。
私立探偵によるマーティ(ダン・ヘダヤ)殺害はともかく、アビー(フランシス・マクドーマンド)が殺害したと思ってマーティの死体を生き埋めにするレイ(ジョン・ゲッツ)。証拠のライターを隠し持っていると誤解してレイを射殺する私立探偵。そして、マーティが復讐に来たと思ってドア越しに私立探偵を射殺するアビー。登場人物たちは不確かな事象に突き動かされ殺人を犯してしまう。最後まで誤謬を正そうしない監督の演出に、観客はモヤモヤ感を払拭できないまま映画を見終えることになる。
「愛しているわ」「怖れているからだろう」アビーの勘違いによって、真実であるはずの<愛>ですら<まやかし>に思えてくる。虚構によって何がしかの<真実>を伝えようとする映画とは違って、コーエン兄弟の作品は「この世のすべてはまやかしである」という不確性原理に徹頭徹尾貫かれているのだ。すべてを疑ったその先には何があるのだろう。デカルトのごとく、水道の配管から滴り落ちる水滴に私立探偵は<真理>を見つけたのかもしれない。
映像的にはいいけど・・・ 映像的にはハッとするところがいくつもあり いい感じでしたが ストーリーとかも合わせた全体的なできに関してはいまいちでした最初に監督自身?が出てきて「作りなおしました」って言うのは ヒッチコック劇場を思い出してなんかよかったけど 後がね・・・ 恋人が殺したと勘違いして死体を埋めるとか 「ハリーの災難」的な雰囲気もありつつつ 恋人が殺人者じゃないかと疑う「疑惑の影」的な雰囲気もありつつ 殺人者に狙われるサスペンスな雰囲気もありつつ 色んな要素がつめ込まれているけど なんかまとまりとして中途半端な感じでした 最後の殺人者との盛り上りはよかったけど それまでの展開がありがちでつまらなかった まぁコーエン好きな人向け 誰でも面白いってものではない気がする
NOT AS SIMPLE AS IT WOULD BE M.エメット・ウォルシュ演じるインチキ私立探偵が、お金持ちのバー経営者(ダン・ヘディヤ)からその浮気性の妻(デボラ・ニューマン)の殺害を依頼されたのに乗じてある完全犯罪を目論むのだが、血が血をよぶ展開は、やがてシンプルから程遠い複雑な事件に発展していく、という、コーエン兄弟のデビュー作。 様式的なショットはこのとき以来彼らのトレードマークのようになるのだが、特にオープニングのテキサスの風景の切り取り方や、随所にでてくるハイウェーを疾走するイメージは美しく秀逸。 また、主にダイアログを中心とした説明のシーンが多い昼間に対し、闇にまぎれて血が流れ、事件が繰り返される夜のシーンといった一日のうちのシンプルな対比、さらに、恐らく誰もが経験する恐るべき孤独な一夜を過ごす視線のさまよう先にあるものの表現に共感を覚えるヒトは多いはず。 コノ後の作品でも執拗に繰り返される、物語に何の解決も与えない聖書からの引用や、ヒッチコックに執心なブライアン・デパルマとはまた違ったアティチュードの、丸いもの、回るものへの映像的執着(キューブリック的)も、このデビュー作中すでに見られ、彼らのインテリジェントな映画史への造詣の深さが窺われる。
映画もCDみたいにリマスターされていくんだな デビュー作品がサスペンスものだとは知らなかった。作品はとても複雑に人間心理を含み誤解が主人公を恐怖と導いていく。その怖さの見せ方はとてもよく、映像の作りもとても丁寧で考えられている。最後の暗い部屋で散弾銃で撃たれた壁から光が洩れていくつもの光の線ができる。その映像の作り方や見せ方はコーエン兄弟の才能を感じさせないではいられないシーンだ。 ジャケットはリバーシブルになっているので裏の写真も楽しみにしてもらいたい。
映画もCDみたいにリマスターされていくんだな デビュー作品がサスペンスものだとは知らなかった。作品はとても複雑に人間心理を含み誤解が主人公を恐怖と導いていく。その怖さの見せ方はとてもよく、映像の作りもとても丁寧で考えられている。最後の暗い部屋で散弾銃で撃たれた壁から光が洩れていくつもの光の線ができる。その映像の作り方や見せ方はコーエン兄弟の才能を感じさせないではいられないシーンだ。 ジャケットはリバーシブルになっているので裏の写真も楽しみのしてもらいたい。
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