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評価:51934年のドイツの夢
1934年秋のナチス・ニュルンベルク大会の模様を描いたプロパガンダ映画。レニ・リーフェンシュタール監督による伝説の作品。
一時間四十分強、釘付けになれることを保証します。私は初見の時に唖然茫然と見入り、ところどころ拍手さえしたくなりました。例えば、党大会開幕の辞で「あなたこそがドイツだ。私たちの故郷だ」やら高らかに宣言されてヒトラーがフッと笑いお馴染みのポーズで手を上げるあたり、そのタイミングというかリズムというか、絶妙なのです。とにかくオープニングの空の映像から始まり、すべての絵が美しくスタイリッシュです。音感絶妙のダンサーの踊りに恍惚となるような気分が味わえます。なんと堂々たる美意識であろうか。これはやばい。恐るべし、レニ・リーフェンシュタール。
当時のドイツ人が夢見た「再生」「健康」「幸福」「共同体」といったイメージが眩しくこちらにやって来る映画でもあります。同時にその直前までのドイツ人の絶望の深さも物語っています。「故郷(Heimat)」という言葉が何度か繰り返されますが、暗く重い雲がやっと割れ、青空が垣間見え、その向こうに夢見る故郷があると信じたのでしょう。まだ見ぬ故郷、この世にはない故郷が。この映像の中のドイツ人たちを滑稽だと笑う人間はよほど自分の高潔を疑わない幸福な人か、地獄を見ていない幸運な人か、想像力の欠如した人だと思います(地獄なら近いうちに地球規模で見れるかもしれない)。私は自分が当時のドイツ人ならばハイルヒトラーとやったであろうと本作品を見てほぼ確信しました。そう思わせてくれただけでもこれは私にとって史上最高最強の映画のひとつです。「理解」をもたらしてくれたという意味で。
人間とは何かと真剣に考えさせてくれる映画ですね。我々は「人間」なるものをとことん買い被っているのではないかと。自由意志とは何か。個人とは何か。幸福とは、絶望とは、希望とは。善とは。そしてこれが人類の近未来ではないと誰が断言出来るのか。もっともその時にレニ・リーフェンシュタールの如き才能が存在する確率はゼロに近いでしょうが。



評価:5全体主義の「全体」の意味が分かる映像
 例えば、僕らが「プロパガンダ映像」として同時代で思いつくのは、某極東の国のニュース映像で見るような、大衆が演じる貧乏臭い素人芝居の映像だったりする。あんな「嫌々やってる感」が透けて見える三流映像では本当のプロパガンダは成立しない。

 その辺、レニは余りに優秀な映画監督だっただけに、いかに「心から」多くのドイツ国民が「自ら」ナチズムを支持していたかを如実に映してしまっている。(この辺の大衆心理については、ハンナ・アーレント「全体主義の起源」を参照。)

 この作品はファシズムの美学に観る者を魅了しかねない危険な力を持っているだけに永遠の問題作であると言えよう。(特に、夜間イベントの壮麗さ、後半の式典での圧倒的なマス映像は、凄まじい。)純粋に映像制作の側面を考えると、全て撮り直しの利かないロケ一発撮影で作り上げたとは到底信じ難い構築力に驚嘆してしまう。

 だが、しかし。この作品以上に問題なのは、我々人間が全体主義的な趣味嗜好に流されやすい「どうしようもない生き物」であるということではなかったか。そして、そのことに自覚的でない如何なる批判も、この作品は受け付けない強度を持ってしまっているのが厄介だ。

 ナチの美学的成功はヒトラーが元画学生だったという変な独裁者だったから成功したのであり、彼のそんな拘りが無ければここまで「美学」の領域に踏み込んだ完成度をナチズム体制は持ち得なかったであろう。人間は「美学」にアイデンティファイする生き物なのだから、「美学」を手に入れてしまった体制に抗うことは難しい。そんなことを観る者に考えさせ、また実感させてしまうが故に、プロパガンダを超えたプロパガンダ作品として観る者に迫ってくる。(なお、チャプリンが全編トーキーを採用した作品は「独裁者」だが、彼はもしかして「意志の勝利」のハイテク撮影に対抗したかったんじゃないか、と僕は妄想している。)

 しかし、こんなことを間近でやってる国があったら、そりゃ堪ったもんじゃないわな。


評価:520世紀最大のプロパガンダ映画
この映画は1934年に行われたナチス党大会の記録映画である。日本では『意志の勝利』というタイトルで知られている。

監督のレニ・リーフェンシュタールは恐るべき完璧さでナチスの世界観を描き出している。整然と行進する突撃隊、熱狂する群集、そしてヒトラーの演説。ワーグナーの音楽をバックに、画面には集団がつくりだすダイナミックで圧倒的な映像の叙事詩が描かれている。

この映画にナレーションは一切ない。しかし見る者に強烈なメッセージを投げかけている。それは個人主義を否定し、誰もが同じように考え同じように行動し、ただ一人の指導者に従うべきである、ということではないだろうか。

また、当時の撮影技術を駆使しているところも興味深い。空撮や移動しながらの撮影は当時としては斬新!であった。リーフェンシュタールの類まれな才能が、この政治的なプロパガンダ映画を芸術作品の域にまで高めてしまったのである。事実として『意志の勝利』は、1935年のパリ国際芸術博においてグランプリを獲得している。

しかしながらこの『意志の勝利』がナチスを賛美するプロパガンダ映画であることに疑いはない。このような映画がドイツ国民を扇動する手段として利用され、やがては戦争の狂気に突き進んでいってしまった歴史を忘れてはならない。

いずれにせよ、この『意志の勝利』が20世紀最大の問題作であることは確かだ。